不動産投資は他の投資法に比べてリスクが低い投資法の一つと言われていますが、不動産投資ならではのリスクも存在します。そのリスクの中には災害リスクというものがあり、南海トラフとは、静岡県の駿河湾から四国の室戸岬を経て九州沖へと延びる連続したくぼみ(トラフ)のことで、このくぼみの海側の岩盤が陸側の岩盤の下に沈み込む境目があります。この境目がずれることで、約100年から150年に一度マグニチュード8前後の巨大地震が繰り返し起きていて、日本の太平洋側に大きな被害をもたらしてきました。これが南海トラフ地震です。特に静岡から西側のエリアに大きな被害が出ると言われているため、東京で不動産投資を始めようと考えている人はリスクの一つとして頭に入れておかなければなりません。では、実際に南海トラフ地震が不動産投資を考えている人にとってどの程度のリスクになるのかという点とそのリスクヘッジについてここで詳しく解説していきます。

不確実性の高いものを判断材料にしていると投資はできない

南海トラフ地震は、マグニチュード8前後の巨大地震が今後30年以内に「70パーセントから80パーセント」の確率で発生すると予測されているものです。マグニチュード8の南海トラフ地震が実際に起こった場合、その被害は関東から九州にかけての都府県でおよそ30万人超の死者が出たり、地震の揺れや火災、津波の被害により340万棟弱の建物が損壊したりすると言われ、経済的な被害は220兆3,000億円にも上ると言われています。

しかし南海トラフ地震は明日起こっても不思議ではなく、逆に30年たっても起こらないことも予想されます。南海トラフ地震はこのように不確実性の高いリスクであるため、これを判断材料に不動産投資を始めることに躊躇する人は、投資自体に向いていないと言わざるを得ません。それよりも身近なリスク、例えば周囲にさらに魅力的な物件が増え自分の所有している物件に空室ができるリスクや、入居者や近隣住民の失火による火災リスクのほうがより現実的なリスクであるといえます。東京でも津波や火災で建物に大きな被害が出ることを考えれば、投資はおろか東京に住むことすらできなくなってしまいます。投資は、「リスクをお金に換える方法」であるという考え方もあります。不確実性の高いリスクに振り回されるようでは、投資を始めることはできません。

実際に南海トラフ地震が起きると投資家はどのような被害を受けるのか

実際に南海トラフ地震が起こり物件に大きな被害が出た場合、入居者はその物件に住み続けることができなくなるため、家賃収入が0になります。地震保険に加入していれば地震が原因で起きた津波・火災・噴火などの被害を保証してもらうことができますが、地震保険の補償限度額は火災保険の半額までとなっており、その上限は建物5,000万円、家財は1,000万円までと定められています。物件の中には5,000万円を上回る物件も少なくないため、地震保険のみで物件を再建築することは難しいと言わざるを得ません。また支払われる保険金の金額も建物の損壊状況により異なり、満額の保険金を手にすることができるのは物件が全損している場合のみです。不動産投資を始めた初期の段階では、地震保険の保険金はローンの借入金額にも満たない可能性があります。そのような場合、一般的な住宅ローンであれば借り入れを行った金融機関によっては借入金額の減額などの措置を取ってくれるところもありますが、不動産投資ローンの場合にはそのような「徳政令」的な制度を盛り込んでいる金融機関はありません。そのため、状況によって投資家は多額のローンだけが手元に残る状況になってしまうことも考えられます。物件が被害を受けた状況でも、大半壊または小半壊と判断され居住可能な場合には損壊を受けた部分を修復することで、収益物件としてその物件をその後も活用できる可能性があります。
そのような場合には大規模修繕が必要となり、その費用に地震保険を活用することができます。また管理会社は地震で物件が被害を受けた際に、入居者からのライフラインの復旧方法についての問い合わせや、計画停電がある場合には入居者に対する告知など非常事態における入居者への対応をしてくれるため、管理会社を選ぶ場合には緊急時にどこまで対応してくれるのかといった点をしっかり確認しておく必要があります。

地震保険に入れば南海トラフ地震の被害を保証してもらうことができる?

収益物件を購入する際に火災保険に加入する投資家の方は多いとは思いますが、この火災保険では地震が原因となる建物の損害に関しては保証してもらうことはできません。南海トラフ地震をはじめとした地震を原因とする建物の被害を補償するためには、地震保険に加入しておく必要があります。この地震保険は、地震保険法に基づき損害補償会社を介して提供される地震保険を、政府が最初に引き受けた保険金支払責任の全部または一部を再保険しています。そのため、どの保険会社で地震保険に加入しても保証の内容や保険料に変わりはありません。この地震保険とは、物件の再建費用などの補填のためのもので地震保険法第一条に定められているように「被災した人々の生活の安定に貢献すること」を目的としています。そのため保険金額は、火災保険で設定した金額の3割から5割までしか設定することができず、保証金額の上限も建物5,000万円、家財1,000万円と定められています。また、実際に受け取ることができる保険金の金額も、建物の損壊の程度により異なってきます。また地震保険には、地震保険単独で加入することはできません。あくまで火災保険のオプションとしてしか加入することができないので、火災保険加入時に地震保険に加入したいと思ったら、同時に加入するようにしましょう。

南海トラフ地震に備えるためにも新耐震基準に適合した物件を選ぶべき?

新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認において適用されている基準のことを言います。新耐震基準は、「震度5程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」という基準を満たしていることであり、2020年現在でもこの基準は変わらず、またこの基準を満たすことが義務付けられるよう改正されました。新耐震基準を満たしていれば、南海トラフ地震が起きても建物に被害は出ないのでしょうか?その答えは「NO」です。その理由として新耐震基準が1981年の時点での技術レベルにおいて定められた最低限の守るべき基準であることと、複数の巨大地震が連続して発生することを想定していないことが挙げられます。そのため、新耐震基準を満たしている建築物でも100パーセント安全であるとは言い切れないことを頭に入れておきましょう。

南海トラフ地震に備えてどのような収益物件を選ぶべきなのか

南海トラフ地震のリスクを完全に0にすることは、今のところ不可能です。しかし、だからと言って何の備ええもしなくていいという訳ではありません。南海トラフ地震に関連する津波や火災のリスクを少しでも少なくするために、物件選びにはある程度気を付けておくべきポイントがあります。ここでは、南海トラフ地震の被害を最小限に抑えるための物件の選び方を紹介していきます。

・ ハザードマップをチェックし、海抜が低い場所や大きな河川のそばの物件は避ける
海抜が低い場所や大きな河川のそばの物件は、津波の影響を受けやすいため浸水や家屋の倒壊などの被害を受けやすくなります。そのため自治体が発行しているハザードマップなどの情報をチェックし、津波の被害を受けにくいエリアにある収益物件を選ぶようにしましょう。

・ 火災に強い構造の収益物件を選ぶ
建物が幸いにも地震に耐えることができ、津波の被害が少なかったとしてもその後の火災で焼失してしまう恐れがあります。特に木造建築の物件は燃えやすいため、火災に強いコンクリート構造の収益物件を選ぶようにしましょう。

まとめ

ここまで、不動産投資における南海トラフ地震のリスクとそのリスクヘッジの方法について解説してきました。南海トラフ地震のリスクを0にすることは不可能だということがお分かりいただけたと思います。しかし南海トラフ地震のリスクは非常に不確定なものであり、それ以前に対策を取っておかなければならないリスクは多く存在します。